米価格が実質的には再び上昇している
日本の近世封建時代は石高制
日本近世封建社会は、米の収穫量を基準とした石高制(こくだかせい)を原理としていました。米1石を玄米150kgとし1万石以上を収穫できる土地を所領する武士を大名と するなど、身分秩序における基準としても用いられていました。米1石で一人を養うとも言われており、江戸時代に日本の人口は3000万人を超えたと推定出来ます。米価格は終戦のハイパーインフレで次元を変える
米価格と金価格は、江戸時代から第一次世界大戦までは1kg当たり0.1円以下のレンジの時代が200年以上続きました。太平洋戦争の終戦後のハイパーインフレで次元を変えました。
図3:米価格と金価格の推移(単位:円)
(「本間宗久相場三昧伝~相場道の極意~:投資レーダー社刊 と 田中貴金属HPより作成)
戦後の米価格は2003年がピーク
戦後の価格は、戦後の経済復興と共に上昇を続けましたが総需要がピークを付けたころから横這いになりました。ピークは最も戦後最も不作であった2003年です。
図4:米価格と金価格の推移(単位:円)
(「本間宗久相場三昧伝~相場道の極意~:投資レーダー社刊 と 田中貴金属HPより作成)
図5:米の需要動向(単位:百万トン)
(農林水産省:「米をめぐる関係資料」2017年11月発行より)
年収から購入出来る米の量のピークは2014年
年収から購入出来る米の量は、戦後ピークまで約6倍になり国民生活は豊かになりましたがピークは2014年でした。これは収入に対する食料費の割合が再び上昇して国民生活が貧困化していることを示します。
図6:米価格と平均年収で購入出来る米の量(単位:kg)
(「本間宗久相場三昧伝~相場道の極意~:投資レーダー社刊 と 国税庁 民間給与実態調査より作成)
食料費上昇の構造
消費における食料費の割合は30年前のレベルに戻る
日本の消費は2人以上の家庭で月額30万円以下のレベルが継続しています。消費額が減少するのに合せて食料費の割合は2011年頃から上昇中で、30年前のレベルに戻りました。
図7:消費における食料費の割合(単位:円)
(総務省:家計調査資料より作成)
食料費に影響を与える実質為替レート
日本の食料自給率は、カロリーベースで40%以下で生産額ベースでも70%以下で推移しています。食料自給率に低下による「食料輸入の上昇」で、為替レートの影響を大きく受ける構造となっています。輸入に影響を与えるのは名目の為替レートより実効為替レート指数となります。実効為替レートは1995年をピークに下落基調ですが2011年より急激に下がりました。実効為替レートが下落すると輸入価格が上昇します。
図8:実効為替レートと食料自給率
(日本銀行:実効為替レート統計 と農林水産省:日本の食料自給率資料より作成)
経常収支から見ると日本は既に貿易立国ではない
日本の経常収支は黒字を継続しているので、収入超過ですが内訳は多く変わって来ております。貿易収支は既に黒字体質ではなくなっており、赤字体質であったサービス収支は訪日外国人の上昇で2019年はついにプラスとなりました。経常収支から見ると日本は既に貿易立国ではなく金融収支で稼ぐ国となっています。2011年からの貿易収支の減少は、東日本大震災後の火力発電の為の「化石燃料の輸入」が大きくなったことによります。サービス収支をプラスに転じさせた訪日外国人の上昇の大半は中国人であり、「中国観光客の日本国内における消費」が原動力です。原油価格が上昇すると再び経常収支は大きく減少します。
図9:日本銀行 経常収支統計より作成(単位:億円)
図10:訪日外国人数推移グラフ
(JNTO:日本政府観光局資料より作成)
まとめ:新型コロナウィルス後の日本の構造問題の解決
新型コロナウィルス影響による食料価格の上昇は不可避
中国の強制隔離・封鎖により生産や物流に大きな悪影響を与えています。中国産の食材の供給がストップし在庫が切れたタイミングから食料の価格上昇は不可避です。中国からの訪日外国人の減少も輸入価格の上昇させる影響があります。食料費の上昇は低所得者層によりダメージがあります。
日本の構造問題は食料とエネルギー
日本の構造問題から来る食料価格の上昇による貧困化への解決は長期的視点から2つの取る組が必要となります。
1.食料自給率を引き上げて輸入量を減らす。
2.化石燃料の輸入を減らす為に、火力発電から再生エネルギーへの転換。
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