「世界の終わり! オールブラックスが 驚くべきパフォーマンスを見せつけたイングランドに敗れる」
ニュージーランド地元紙が一面を全面黒で報道した。
試合の前にニュージーランドにV字で対抗するイングランド
試合後に失意のオールブラックス
ラグビーのワールドカップの準決勝で、イングランド代表がニュージーランド代表を破りました。
ニュージーランドの地元の新聞では、「この世の終わり」と見出しで報じられたようですが、ニュージーランド国民を失望のどん底に突き落として「驚異的なパフォーマンス」と評されてたイングランド代表のようにイギリス経済は良くないようです。
イギリスは1980年代に変革した。
19世紀に蒸気機関がイギリスで発明され、産業革命が起きました。これによりイギリスは世界で一番早く工業化に成功し、世界一の海運国家となり「大英帝国」として世界の覇権を握りました。20世紀の第二次世界大戦後は、覇権をアメリカに譲り、英国病と呼ばれる長い低迷期を経験します。
そこから1980年代には、女性初の首相であるマーガレット・サッチャー政権の下で、大胆な規制緩和などで改革に取り組みます。「サッチャリズム」と呼ばれる経済政策の中でも大きかったは、金融部門に外国資本の参入を認めたことです。これにより外国からの投資を受け入れて、「シティ」は「ウォール街」と並ぶ世界の金融センターとなりました。
「シティ」が外国からの資本を受け入れのよる株・外国為替・債券の取り扱い高が増大と引き換えに、ポンド高を誘発し工業は輸出競争力を失いました。イギリスはこの時期より貿易収支のマイナスが定着し、経常収支は海外からの投資の増大も合わせてマイナスが拡大しました。イギリスは、外国からの投資の増大で「ポンドが上昇」し、減少すると「ポンドが下落」するという国になりました。
参考図:イギリス貿易収支(単位:10憶ポンド)出典:Investing.com
参考図:イギリス経常収支(単位:10憶ポンド)出典:Investing.com
アメリカの「シェールオイル革命」が外国からの投資の転換点に
「シティ」のあるロンドンには、移民も多く流入し、さらに中東やロシアのオイルマネーも受け入れることで、特にロンドンの不動産価格は急上昇することになりました。
オイルマネーについては2005年頃から原油の輸出・輸入額の拡大が顕著ですが、リーマンショック後の2012年にピークを付けました。
移民の流入とオイルマネーの流入の2つの要因で、特にロンドンの住宅価格はイギリスの他の地域の2倍以上に上昇を続け、平均年収に対する住宅の価格はピークの約15倍まで達しバブルとなりました。
金融部門のロンドン以外の他の地域は、ロンドンと同様に上昇していますが、こちらは平均年収の7倍弱がピークです。
参考図:純移民流入数(単位:千人/5年) 出典:国連
参考図:原油輸出高(単位:百万USドル)出典:IMF
参考図:原油輸入高グラフ(単位:百万USドル)出典:IMF
ブレグジット国民投票へ
次の2つが2016年6月23日のブレグジット国民投票までに進行しました。
- ロンドンと他の地域の住宅価格の平均が2倍以上に拡大して、ロンドンに不動産を所有している富俗層とそうでない人々の格差は拡大。ロンドンの若い人は、住宅価格が上昇しすぎて住宅を持つことが出来なくなるが、移民の増加が住宅バブルの原因と不満を高める
- 富俗層とそうでない人々の格差が、拡大して最中にも低所得者に負担感の強い付加価値税の税率が2011年に17.5%から20%に引き上げ。イギリスに来てからの期間の短い移民にも、付加価値税を財源とする社会保障が享受されることも、富俗層でないイギリスの人々の不満が高まる。
上記2点により移民の増大にイギリスの人々は不満を高めるが、EU法で移民を拒否が出来ないことによりEU離脱論が強まり、ブレグジット国民投票に至りました。
参考図:イギリス住宅価格(単位:ポンド) と平均年収(単位:ポンド)
出典:住宅価格はNationwide
出典:平均年収はOECD
ブレグジット国民投票後のポンド
ブレグジット国民投票後の経済状況ですが、最も大きな影響を受けているのが為替です。外国からの投資で最大のオイルマネーは、アメリカが2013年頃からの「シェールオイル革命」により原油の輸入国から輸出国へ転換しているので、今後は中東やロシアからの投資はかつてのような金額にはなりません。
参考図:対外資産残高(単位:百万USドル)出典:IMF
参考図:対外負債残高(単位:百万USドル)出典:IMF
外国から投資の減少によるポンド安のよって、金融部門以外の自動車関連などの輸出競争力を回復させイギリスの貿易収支と経常収支はマイナス幅が縮小に転じていますが、それ以上に外国からの投資が減少しています。
ポンドは既に、ドルやユーロに対して過去40年間の最低レベルで推移し、今後も長期的には上昇しないと思われます。国民全体が30年間で、4割の資産を失ったことになりす。厳しい現実ですが、せめてラグビーワールドカップでは優勝して歓喜してもらいたいです。
参考図:ドル ユーロ ポンド レート 出典:世界の経済ネタ帳